COLOR Retsu Birthday
4月3日――


3月という、別れの季節が終わり
4月は新たなスタートをきる人が多い季節。

エイプリルフールネタとして盛り上がった後には
オレには、とても大事なイベントが控えていた。

「今年はどうすっかなぁ・・・」
自室の机に突っ伏せ、卓上カレンダーの日付と睨めっこを続けること数時間。
その卓上カレンダーのある日にちには赤いまるが記されている。


『4月10日』

たった一人の兄であり、「コイビト」でもある兄の誕生日だ。


毎年、試行錯誤しているがそろそろネタ切れもいい所だ。
あとは、値がはるもので、簡単にあげられるようなものじゃない。


兄貴に何がいいか聞いてもいいのだが、せっかくだから
自分で考えたものをあげて喜んでもらいたい。
なんて意地があったりする。

とりあえず、学生なオレはまだ春休み。
買い物に出かけながら色々考えるとするか!!









と意気込んだのはよかったのだが・・・


―4月7日 0:25

携帯のカレンダーが示す本日の日付と時刻。
卓上のカレンダーをみてもその現実は変わらない。


春休みラストスパートと言わんばかりに
遊びまくっていた俺に突きつけられた現実がこれだ。
カレンダーをみて目前と迫ってきている兄貴の誕生日。
もちろん、まだプレゼントは決まっていない。

10日になった瞬間に渡したいから―と、指折りプレゼント探しに
使える日にちを数えると・・・


今日、明日、あさって

今日、あした、あさって・・・




きょう・・・、あした・・・・・・あさ・・・って・・・



「だ、だめだーーーーーーーーー!!!!」


頭を抱え込んで机に突っ伏す。
オレってば進歩のねぇ…


とりあえず、大学も始まるし・・・
周りの意見を聞きながら決定しようなどと
軽く凹みながらオレはベッドに潜るのだった。


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「おはよーっす。なんだ星馬春休みボケか?」
「おーっす。まだ体が休みモードなんだよ・・・」

机に突っ伏して半分寝ていたオレに友人が声をかける。
休み中一緒に遊び倒して不規則な生活してたはずなのに
なんだよこの差は・・・・・・

「そういえば、お前進路決めたか?」
「・・・進路ぉ?」

そうだ。学生として最後に遊び倒せる春休みだからって
遊び倒していたんだっけか・・・
一応、候補はあがってるし、推薦の話も休み前にしてたからすっかり忘れてたぜ。

「一応は。」
「じゃあ、スーツとかももう揃えたのか?」
「うんにゃ、それはまだ。」

そっか、リクルートスーツとかいって色んな
紳士服が宣伝合戦してたっけな。

「帰りにちょっとみていかね?」
「あぁ、いいぜ?」

と、返事をしたところで、教授が講義室に入ってきて
長くて眠たい説明を始めるのだった―――






学校帰り。近くの有名紳士服に立ち寄った俺たちは
それぞれスーツをみたり小物をみるなりしていた。
来年からはこんなん毎日来て行くんだなどと考えただけで
オレは肩が凝りそうだ。

『兄貴も毎日着てんだよな―・・・』

すげぇや。なんて思いながら目に留まったエンジ色のネクタイを
手にとって眺めていると―

「お前にその色は似合わないと思うけどなー?」

「びっ!?びっくりさせんなよっ!!!」

横から突然現れた友人に向かって思わず叫ぶ。

「わりぃ、わりぃ。ネクタイと言えばさ、何本くらい持っとくといいんだろうな?」

「は・・・?そんなにいるもんなのか?」

制服とかのネクタイが常に一つだったせいか、イマイチピンとこない。
でもまぁ、社会人ともなれば毎日同じってわけにもいかないか・・・
週でローテーションしても5本はいるのかぁ…
兄貴はどれくらい持ってんだろ・・・・・・

「そっか!!!!!」

今度は突然声をあげたオレに友人が驚く番だった。

「な、なんだよイキナリ・・・」

目を丸くして心臓の辺りを押さえてる友人に軽く謝り

「わりぃーなんでもねぇんだ」
なんて答えたが、口元は緩んだままだった。




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昔から、髪の色もあってか、
赤は兄貴。青はオレというイメージがずっとついてまわってきた。

オレ自身、「青はオレの色!!」なんて思っていたし。


でも、ミニ四駆世界グランプリに出場が決定し、
出来上がってきたユニフォームをみて――
烈兄貴がそれを着たのをみてオレは驚いたのを覚えている。

ビクトリーズのユニフォームは青がメインカラーだった。

今まで、青はオレが身につけていたから
兄貴が「青」を身につけているのを見るのは、ほとんど初めてだったかもしれない。


あの時はガキだったから、なんとなくオレの色を
取られたような気もして悔しい気持ちがでかかったけど、
兄貴が青を身につけているのはなんだか、嬉しかった。


―――オレが兄貴の傍にいるみたいで


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4月9日 23:55

コンコン。

軽く、ドアをノックする音。
昔、よくノックせずに入って怒られたなぁと苦笑しながら
部屋の主の返事を待つ。

「はーい?」

ガチャ

ドアを開ければ、机に向かってノートパソコンを開いてる兄貴がいた。
キリがよくなったのか、手を止めてドアのほうへと向き直る。

「部屋にまで来るなんて久しぶりじゃないか?」
お前遊んでばっかりだったしなー

なんて、どこか羨ましそうに言われる。
「兄貴だって、去年は遊んでただろ?」

答えながらドアを閉めて勝手にベッドに腰をかける。

「まぁな。遊べるうちに遊んでおかないとな?」
社会人は遊べないって先輩たちに言われたからなぁと苦笑する。
数日とはいえ・・・ちゃんと社会人やってるんだなぁなんて思っちまった。

「そういえばさ、兄貴ってネクタイ何本持ってる?」
「? なんだよ急に。一応5本はあるけど、入社式で12本あるといいとか言われて
『げっ』って同期と顔見合わせちゃったよ」

あははっと軽く笑うが、その話を聞いた瞬間はきっと冷や汗ものだったんだろうなぁ・・・
オレだったらそうだ。絶対。
それにしても12本か・・・オレもそんなに必要なのか?

嫌だなぁ・・・と思いながら溜息をついていると、そんな俺の様子がおかしいのか
兄貴はくすくすと笑いながら「頑張れ」なんて言っている。

ベッドサイドの時計を横目で見ると
まもなく、0時になろうとしていた。

このときを待っていましたと言わんばかりにベッドから立ち上がり、
椅子に座ってる兄貴を抱きしめる。
「ご、豪?!」



4月10日 0:00 ―――
「誕生日、おめでと。烈兄貴。」

え、という少しの間のあと、

「あ、ありがとう。そっか、今日だっけ」
などという少し間の抜けた返事が返ってきた。
「・・・忘れてたのかよ?」
少し、距離をとって兄貴の顔を覗き込む。
「もうすぐだなぁとは思ってたんだけどな。」

ほんのりと顔を赤らめて目線を泳がせている。
この兄は…どこか抜けてるんだよな・・・まぁ、そこが可愛いところでもあるんだけど。
そんなことを言ったらぶっ飛ばされること必至なので俺の中だけで留めておく。

「それだけ、新しい環境に必死なんだろ?お疲れ様。と、ハイ。」
すっと、差し出した長方形の箱。

「ありがとう。」
受け取って、箱にかかている紐を解いていく。

箱を開けて中身を見た兄貴は一瞬目を丸くして、小さく笑うと
「―・・・お前、それであんな話したのか?」

兄貴の手には、紺地に白のドットが入ったネクタイ。

「何本あっても困らないだろうしって、さ。」
それと、ちょっとしたオレの独占欲―――。





―――翌朝
そのネクタイを締めて会社にでかけた兄貴を見送って
一人にやけていたのは内緒の話。
















あとがきという名のいいわけ。
身につけるものって、ささやかだけどその人を独占できた気になる不思議。
兄貴の誕生日なのに兄貴がほとんどでない。。。orz




こう、表現することの難しさを改めて痛感しました。
うまく言葉にできないというか元々文章書くのは苦手なんです…。
ここまで書いてあげるのやめようかと未だに悩んでます。


豪が芋ジャーは合わないけど、烈はよくある学年カラー3色どれでもいけるんじゃないか?
なんて、ふと思ったのがきっかけです。
「自分色に染めてやりたい」
という豪の独占欲・・・みたいのが書きたかったんですよ。


今日、明日、明後日 のフレーズもふと思った瞬間使いたくてしょうがなかったです!



烈兄貴誕生日おめでとう!!
ここまで読んでくださった心優しい貴方にも感謝です!!!

08.04.10 Ayase Natsu (Yuuki Natsuki)